
腫れがなくても、すねの一点の痛みは確かめておきたいサイン
すねのある一点が、走り出すと響くように痛む。立ち止まれば落ち着き、普段どおり歩けもする。市民マラソンに向けて距離を延ばした時期と重なるなら、疲労骨折の可能性も考えておきたい状態です。この記事では、気づきにくい初期症状の特徴、練習を控える目安、レントゲンで所見が見えない場合に診察で伝えたいことを整理します。
この記事の要点まとめ
- 歩けても、走るとすねの一点が痛む場合は疲労骨折の可能性を考えます。
- 同じ痛みが続くときは走るのを控え、症状の経過を整形外科で伝えます。
- 初期はレントゲンに所見が出ないこともあり、追加検査や段階的な復帰を相談します。
疲労骨折の症状に気づかないのはなぜ?すねの痛みの見方

疲労骨折は強い衝撃ではなく、同じ負荷の積み重ねで起こります。そのため初めは「走ると痛い」程度の症状にとどまることがあり、歩ける・腫れが目立たないという理由だけでは可能性を外せません。
距離を増やしてから痛むなら、骨に繰り返しかかる負荷にも注目
転倒やぶつけたことで折れる骨折とは成り立ちが異なります。着地のたびに骨へかかる小さな負荷が重なり、骨の修復が追いつかなくなったときに生じるのが疲労骨折です。すねの骨(脛骨)はランナーに多い部位で、足の甲の中足骨もよく知られています。走る距離や回数を短期間で増やした数週間後に痛み出す流れは、典型的な経過のひとつです。
走ると痛いが休むと引く、歩ける――見過ごしやすい初期症状
初期は走っている間や走った後だけ痛み、休めば軽くなることが少なくありません。「疲れがたまっているだけ」と練習を続けやすいのは、この段階です。
負荷がかかり続けると、歩くときや立ち仕事の最中、夜の安静時にも痛むようになる場合があります。腫れは目立たないこともあり、見た目だけでは判断がつきません。
すねの一点を押すと痛い場合、筋肉痛とどう違う?
筋肉痛はふくらはぎなど広い範囲がだるく、数日で和らいでいくことが多い痛みです。すねの内側に沿って広めに痛むシンスプリント(骨を包む膜のまわりの炎症)も、よく似た出方をします。
一方、指で示せるほど狭い一点を押したときの痛み(圧痛)は、骨そのものの負担を考える手がかりになります。ただし自分で何度も押したり、片足で跳んで確かめたりするのは控え、気づいた点を診察で伝えてください。
練習量だけでなく、食事や月経の変化も振り返る
骨にかかる負担は練習量だけで決まるわけではありません。食事量に対して運動量が多い状態、月経周期の乱れ、以前の疲労骨折、骨密度の低下なども、診察で確認したい背景です。
軍人を対象とした研究では、血中のビタミンD濃度が低い人で疲労骨折との関連が報告されています1。対象が限られた結果で、個人の原因を決めるものではありませんが、生活を振り返るきっかけにはなります。
ポイント
「歩ける」「腫れていない」だけで疲労骨折を外さず、一点の痛みと練習量の変化をセットで見てください。
走るのを控える目安と、整形外科で伝えたいこと
走るたびに同じ場所が痛むなら、休むと引く段階でもランニングはいったん止め、整形外科へ相談するのが目安です。受診時は痛みの強さより、出る場面と経過を伝えると状況が整理しやすくなります。
走るたび同じ場所が痛むなら、練習をいったん止める
痛みを我慢して走り続けると、骨の小さな損傷が広がるおそれがあります。止めている間に、痛み出した距離や時間、距離を増やした時期をメモしておきましょう。
痛みを10段階で記録しておくのも一つの方法です。ただ「3以下なら走ってよい」と数字だけで決めるのは避け、どの場面で痛むかの変化と合わせて見てください。
仕事中や歩行中にも痛むときは、受診を先延ばしにしない
次のような変化があれば、早めに整形外科へ相談しましょう。
- 数日休んでも、同じ一点の痛みが残っている
- 品出しや歩行中にも痛む
- 痛みが日ごとに強くなっている
- 夜や安静にしているときも痛む
体重をかけにくい、急に強く痛んだという場合は、日を置かずに診察を受けてください。
初期のレントゲンで所見が見えなくても、痛みの経過を伝える
疲労骨折が疑われる場合、レントゲンの結果の見方は医師にご相談ください。検査結果と痛みの経過を踏まえて判断するため、「異常なし」をそのまま練習再開の合図にしないでください。
疑いが残る場合は、医師が時期をあけた再撮影やMRIなどの追加検査を検討します。以前、足の痛みで受診して異常が見つからなかった経験があれば、それも大切な情報です。
相談時は、練習・品出し・送迎の負荷も伝える
当院にご相談の際は、次の情報がそろうと経過を追いやすくなります。
- 痛む位置と、指で示せるほど狭いかどうか
- 距離を増やした時期と、増やした量
- 仕事で立っている時間、持つ荷物の重さ
- 送迎で歩く距離や回数
- 過去の検査結果、食事や月経の変化
当院での相談に限らず、スポーツ歴や練習内容も伝えると、痛みの背景を整理する手がかりになります。
仕事や送迎を続けながら、走る生活へ戻るには

走るのを止めても、立ち仕事や歩行で骨への負荷は続きます。日常の負荷を整えたうえで、歩ける段階と走れる段階を分けて復帰を考えていきます。
走らなくても負荷は残る――品出しと送迎の調整
品出しで長く立つ、重い箱を抱えて歩く、子どもの送迎で歩く。どれもすねへの負荷に含まれます。痛みが強まる時間帯や作業を記録しておき、仕事内容や移動手段の工夫を診察時に相談してください。状態によっては、松葉杖などで体重のかけ方を調整することもあります。
骨の回復期間は部位と状態で変わる
骨がつながるまでの期間は一律ではありません。痛む骨の部位や損傷の程度、日常で避けにくい負荷は人によって異なります。足の舟状骨や第5中足骨の付け根(ジョーンズ骨折)などが痛む場合も、経過の見方や対応は医師にご相談ください。
骨の治りを早める目的の治療法も研究されていますが、成人の急性骨折を対象としたレビューでも評価は定まっていません2。通院の間隔や再検査の要否は、医師が経過を見ながら判断します。
歩けることと、マラソン練習に戻れることは別に考える
痛みなく歩けることは、走る準備が整ったことと同じではありません。日常生活に戻れたかどうかと、走る動作で本来の力を出せるかどうかは分けて確かめることが大切です。
歩行、早歩き、短い距離のジョギングと段階を追い、負荷を上げた翌日に痛みが戻っていないかを確認しながら進めます。再開を急いで同じ痛みを繰り返さないよう、医師と相談しながら一段ずつ上げていきましょう。
大会の予定も伝え、一人ひとりの復帰の進め方を相談する
子どもと走る大会の日程は、遠慮なく伝えてください。予定から逆算して練習量を見直し、着地の仕方や股関節・体幹の使い方など、痛みが出た背景を一緒に振り返ります。
必要に応じて運動指導やリハビリを組み合わせ、ケガをしにくい身体づくりも見据えながら進め方を考えます。痛みへの対応のその先にある、親子で走る時間を目標に置いて考えていきます。
ポイント
歩ける段階と走れる段階は別物です。翌日の痛みを目安に、負荷は一段ずつ上げていきます。
よくある質問
Q1. 疲労骨折でも歩けることはありますか?
A. あります。初期は走ったときだけ痛み、日常の歩行はできる場合が少なくありません。歩けるかどうかでは判断せず、すねの一点の痛みが続くときは整形外科へご相談ください。
Q2. 足の骨にひびが入ったときは、どんな症状が出ますか?
A. 押すと狭い範囲が痛む、体重をかけると響く、運動後に痛みが残るといった症状がみられることがあります。腫れや内出血が目立たないこともあり、症状だけで見分けるのは難しいため、診察と画像検査で確認します。
Q3. 疲労骨折が治るまでには、どれくらいかかりますか?
A. 骨の部位、損傷の程度、日常で避けにくい負荷によって大きく異なり、一律の期間はお伝えできません。経過を確認しながら、医師が運動再開の時期を判断します。
Q4. 痛みが10段階で3くらいなら、走り続けても構いませんか?
A. 数字だけで判断するのは控えてください。同じ一点が走るたびに痛む、歩行中にも痛むといった出方の変化のほうが、判断材料として役立ちます。
Q5. レントゲンに加えてMRIまで受けると、費用はどのくらいかかりますか?
A. 保険診療の自己負担割合や、行う検査の組み合わせによって変わります。費用は医療機関によって異なるため、受診先の医療機関で確認してください。
参考文献
1. Dao D, Sodhi S, Tabasinejad R, et al. Serum 25-Hydroxyvitamin D Levels and Stress Fractures in Military Personnel: A Systematic Review and Meta-analysis. The American Journal of Sports Medicine. 2015. PMID: 25371440 / DOI: 10.1177/0363546514555971
2. Searle HKC, Lewis SR, Coyle C, et al. Ultrasound and shockwave therapy for acute fractures in adults. The Cochrane Database of Systematic Reviews. 2023. PMID: 36866917 / DOI: 10.1002/14651858.CD008579.pub4
東京医科歯科大学附属病院
さいたま赤十字病院
済生会川口総合病院(非常勤)
獨協医科大学埼玉医療センター
東埼玉総合病院
日本リハビリテーション医学会
日本股関節学会
日本人工関節学会
あわせて読みたい関連記事
