
その痛み、歩けるからと様子を見て平気でしょうか
バドミントンの着地で足首の後ろに衝撃が走ったのに、歩けてしまうので判断に迷う——そんな声は少なくありません。アキレス腱に大きな損傷があっても歩ける場合があります。この記事では受傷時の感覚・へこみ・つま先立ちという3つの確認項目から、整形外科を受診する目安を医師の視点で整理します。
この記事の要点まとめ
- 歩けてもアキレス腱に大きな損傷が生じている場合があり、歩行の可否だけでは判断が難しい点を解説
- トンプソンテスト・へこみの触診・片足つま先立ちの3手順で受診目安を確認
- 判断に迷う際はRICE処置を行いながら、整形外科でエコー等による確認を検討する流れを紹介
歩行可能でも油断できない?アキレス腱断裂と炎症(アキレス腱炎)の違い

アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)とかかとの骨をつなぐ、体の中でもっとも太い腱です。ここに繰り返し負担がかかって炎症が生じた状態がアキレス腱炎やアキレス腱周囲炎で、動き始めや運動中にじわじわ痛むという経過をたどる方が多く見られます。一方の断裂は、ジャンプの踏み切りや着地といった一瞬の動作で腱そのものが切れる外傷。痛みの出方も経過も、まったく別ものと考えられています。
完全断裂と部分断裂(不全断裂)の症状と歩ける理由
「歩けたから切れていない」と受け取る方は少なくありませんが、この考え方は必ずしも当てはまりません。足首を下に向ける動き(底屈)には、後脛骨筋や足の指を曲げる屈筋群など複数の筋肉が関わります。アキレス腱が完全に切れていても、これらの筋肉が代わりに働き、ゆっくりであれば歩けてしまう場合があるのです。
部分断裂(不全断裂)ではさらに見極めが難しくなります。腱の一部がつながっているため力が入る感覚が残り、炎症や捻挫と受け取られやすい傾向があります。歩けるかどうかは、断裂の有無を判断する材料になりにくいという点を押さえておきたいところです。
受傷時に感じる「後ろから蹴られた衝撃」と「バチッという破裂音」
断裂を起こした方が語る感覚には、共通点が多く見られます。代表的なのが「後ろから誰かに蹴られた」「ボールをぶつけられた」という打撲に近い衝撃で、振り返っても誰もいなかった、というお話もよく伺います。
さらに、受傷の瞬間に「バチッ」「ブチッ」という破裂音を聞いた、足首から音が響いたと感じた、というケースもあります。直後は強い痛みが出ても時間とともに落ち着いてくることがあり、これが受診を先延ばしにする一因になりがちです。受傷時の音や衝撃の記憶は診察の場でも手がかりになりますので、できるだけ具体的にお伝えください。
ご自宅で試せるアキレス腱断裂の3つのセルフチェック手順
これから紹介する3つの確認は、受診の必要性を考えるための目安であり、診断そのものではありません。いずれも無理のない範囲で、できればご家族に手伝ってもらいながら行ってください。
【チェック1】ふくらはぎを握るトンプソンテストのやり方
整形外科の診察でも用いられる確認方法がトンプソンテストです。手順はシンプルです。
1. ベッドや床にうつ伏せになり、両足首から先をベッドの端から出す(膝は伸ばしたまま)
2. ご家族が、ふくらはぎのもっとも太い部分を横からぐっと握る
3. その際に足首が下に向く(つま先が伸びる)かどうかを見る
痛みのない側では、ふくらはぎを握るとつま先が自然に下を向きます。痛む側で足首がほとんど動かない場合は、腱の連続性が保たれていない可能性を考える所見です。 左右を見比べることがポイントになります。
【チェック2】アキレス腱部分のへこみ(陥凹)を指で触って確認
次に、かかとの上からふくらはぎに向けて、アキレス腱を指の腹でそっとなぞってみてください。負担のかかっていない腱は、鉛筆を数本束ねたような太さで一本の筋として触れます。
断裂がある場合、かかとの骨から2〜6cmほど上の位置に、くぼみ(陥凹)や左右差のある段差を触れることがあります。ただし受傷直後は腫れや内出血で分かりにくく、へこみが見つからないことをもって断裂の可能性を除外できるわけではありません。強く押し込まず、左右を軽く触り比べる程度にとどめましょう。
【チェック3】無理のない範囲でのつま先立ち(片足立ち)の可否
3つめは、壁や手すりに手を添えた状態で、痛む側の片足だけでかかとを持ち上げられるかの確認です。両足でのつま先立ちは他の筋肉で代償できてしまうため、片足で試すことに意味があります。
かかとがまったく浮かない、力が抜けたように感じる、ふくらはぎに力が入らない——こうした感覚があれば、腱への大きな損傷が疑われます。転倒を避けるため必ず支えを使い、痛みが強ければその時点で中止してください。 3つのうち1つでも当てはまるなら、自己判断で経過を見るより、整形外科での確認をおすすめします。
整形外科を受診すべきタイミングと応急処置
無理な運動や放置を避け受診を優先すべき判断基準
受診をご検討いただきたい目安を整理します。
- 受傷時に破裂音や「蹴られたような衝撃」があった
- トンプソンテストで足首が動かない、または左右差が大きい
- 片足でかかとを上げられない、力が入りにくい
- アキレス腱にへこみや段差を触れる
- 数日経っても違和感や腫れ、歩きにくさが続く
痛みが軽くなってきたとしても、腱の状態が整ったことを示すとは限りません。損傷したまま歩き続けると腱の端が離れていき、選択できる治療方法の幅が狭まる場合もあります。通勤や仕事の予定を組み立てるうえでも、まず状態を把握することが先決です。
受診までに自宅で行うRICE処置(安静・冷却など)のポイント
受診までの間は、外傷の基本対応であるRICE処置を意識してください。Rest(安静)は歩行を最小限にし、可能なら松葉杖や添え木で足首を固定します。Ice(冷却)は氷のうを布で包み、15〜20分を目安に。Compression(圧迫)は包帯で軽く巻く程度に、Elevation(挙上)は座るときに足を心臓より高い位置へ置きましょう。
入浴で長く温める、マッサージでほぐす、ストレッチで伸ばす——こうした対応は受傷直後には控えるのが望ましいと考えられています。飲酒も腫れが強まる要因になり得ます。判断に迷う段階では「動かさず、冷やして、上げておく」を心がけてください。
越谷市で足首の痛みが気になる方は西郷整形外科リハビリクリニックへ
超音波診断装置(エコー)を活用した迅速な画像検査
アキレス腱の状態を把握するうえで、画像による確認は欠かせません。レントゲンでは腱そのものが写りにくいため、当院では超音波診断装置(エコー)を用いて、腱の連続性や周囲の炎症の様子を観察しています。 その場で足首を動かしながらリアルタイムに確認でき、被ばくがない点も特徴です。
当院では、日本整形外科学会認定の整形外科専門医が診療を担当し、これまでの臨床経験をもとに一人ひとりの状態を丁寧に評価します。また当院は近隣の総合病院と連携しており、手術を要するケースや緊急性が高いと判断される症状は速やかに紹介し、その後の経過観察やリハビリを当院で引き継ぐ体制を整えています。
復帰や通勤を見据えた保存療法とリハビリテーション対応
アキレス腱の損傷では、装具や固定による保存療法と手術療法のいずれかが検討され、年齢・活動量・仕事内容などを踏まえて方針をご相談していきます。当院は運動器リハビリテーション施設基準Ⅰを満たす体制で、国家資格を持つ理学療法士がリハビリ平行棒やレッグプレス、エアロバイクなどを用いた計画を立てています。
電車通勤か、競技復帰か——生活背景は人によって異なります。当院では痛みをやわらげる対応に加え、その先の生活の質(QOL)を見据えたご提案を心がけています。 足首の違和感が続く場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. アキレス腱が断裂するとどんな痛みがありますか?
A. 受傷の瞬間に強い痛みが走るものの、その後は痛みが和らぐと表現される方もいます。「後ろから蹴られたような衝撃」「棒で叩かれた感覚」といった打撲に近い訴えが多く、痛みの強さだけで断裂の有無を見極めることは難しいと考えられています。
Q. アキレス腱断裂の確かめ方は?
A. ご自宅ではトンプソンテスト、アキレス腱のへこみの確認、片足でのつま先立ちの3点が目安になります。ただしこれらは受診の必要性を考えるためのもの。判断には超音波検査などの画像所見と医師の診察が必要です。
Q. アキレス腱断裂は自然治癒しますか?
A. 腱が離れた状態のまま過ごすと、つながり方や足首の機能に影響が残る場合があります。固定による保存療法が選ばれることもありますが、いずれも医師の評価に基づいた管理が前提です。自己判断で経過を見ることは控えてください。
Q. アキレス腱が断裂した瞬間はどんな感じですか?
A. 「バチッ」「ブチッ」という破裂音を聞いた、足首の後ろで何かが弾けたように感じた、という声が多く聞かれます。振り返っても誰もいないのに蹴られたと感じた場合は、受診をご検討ください。
Q. 歩けているのですが、それでも受診したほうがよいでしょうか?
A. アキレス腱が損傷していても、ほかの筋肉が代わりに働いて歩ける場合があります。歩行できることは判断材料になりにくいため、受傷時の衝撃や音があった場合は状態の確認をおすすめします。
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東埼玉総合病院
日本リハビリテーション医学会
日本股関節学会
日本人工関節学会
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