
歩ける状態でも最初に確かめたい受診サインと自宅での手当
足首をひねった直後は、まず骨折などを疑うサインがないかを確かめ、そのうえで安静・冷却・圧迫・挙上の応急処置を行います。少し足をつけて歩ける場合でも骨や靭帯のけがが隠れていることは珍しくありません。この記事では、今夜の受診を考える基準と家庭にある物でできる手当、翌日の立ち仕事や送迎へ戻るまでの段階的な考え方を解説します。
この記事の要点まとめ
- 足首の形がゆがむ、しびれる、足先の色が変わる、強く痛むといったときは、早めに医療機関へ相談しましょう。
- 応急処置は、休ませる・冷やす・おさえる・高く上げるが基本です。おさえている間にしびれや色の変化があれば緩めます。
- 少し歩けても骨折などが隠れていることがあります。診察ではくらしで必要な動きを伝え、活動を少しずつ戻しましょう。
足首の捻挫で今夜の受診を考えるサインと、骨折を疑う痛みの場所
足首の捻挫(足関節捻挫)は、外くるぶし周りの靭帯(骨と骨をつなぐすじ)を痛める内反捻挫が多くを占めます。靭帯のけがは、その程度によって1度(靭帯が伸びる)から3度(完全に切れる)に分けられます。ただし、見た目だけで骨折や重い靭帯損傷を見分けることはできないため、手当を始める前に、まずは急いで医療機関へ相談すべき状態かどうかを確認します。
変形やしびれ、足先の色の変化があれば診療時間を待たない
足首がはっきりと変形しているときや、皮ふが破れて血が止まらない傷があるときは、ふだんの診療時間を待たずに救急での受診を考えてください。足先のしびれや冷たさ、皮ふの色の変わり、まったく足をつけないほどの強い痛みがあるときも同じです。
夜間や休日に判断に迷うときは、地域の救急相談窓口などを利用して受診先を相談する方法があります。
少し歩けても骨折を疑うサイン:押すと痛む場所と歩ける歩数
医療現場では、レントゲン検査が必要かを判断する目安としてオタワ足関節ルールという基準が用いられており、骨折の可能性を除外する手がかりとして研究で検討されてきました12。
具体的には、くるぶしの後ろのふちや先、足の外がわや甲の内がわの出っぱった骨を押して、強く痛むかどうかをみます。あわせて、けがのあとや診察のときに体重をかけて歩けるかどうかもみて、レントゲンが必要かを考える手がかりにします。ただしこれは医療者が使う基準であり、少し歩けることだけで骨折を否定せず、強い腫れや内出血が広がる場合も早めに整形外科を受診してください。
少し歩けても、翌日の立ち仕事や送迎を続けてよいとは限らない
家の中を数歩移動できることと、翌日に長時間の品出しやレジ業務、子どもの送迎で歩き続けられることは、足首にかかる負担の大きさが異なります。人手の少ない職場を休みにくい事情や、家庭で家事・送迎を担う立場があると無理をしがちですが、腫れがある状態で歩き続けると靭帯の修復が妨げられるおそれがあります。
当院のリハビリで目指しているのは、症状をやわらげることだけではなく、患者さんが自らの力で動き、毎日を前向きに過ごせることです。「仕事や日常生活を快適に送りたい」「もう一度スポーツを楽しみたい」というご本人の願いを治療計画に結びつけていますので、診察の際には普段の生活で必要な動作もあわせてお知らせください。
ポイント
家の中を少し歩けても骨折や靭帯損傷が隠れていることがあり、翌日の立ち仕事や送迎をそのまま続けてよいとは限りません。
家庭にある物でできる応急処置の方法と、受傷当夜から避けたい行動

受診までのあいだは、痛めた足首を守って休ませ、冷やす・おさえる・高く上げるというPRICE処置(またはRICE処置)を行い、腫れや痛みが強まらないように手当てします。特別な器具がなくても、家にある保冷剤やタオル、クッションを使って手当てができます。
保冷剤はタオルで包み、時間を区切って外くるぶしを冷やす
腫れや熱感があるときは、氷や保冷剤を薄いタオルで包み、痛む外くるぶし周辺に当ててアイシングを行います。氷などを皮膚に直接、長時間当て続けないでください。
冷やす時間は、1回につき15〜20分ほどを目安にします3。冷やしすぎによる皮膚のトラブルを防ぐため、皮膚の感覚が鈍くなったら一度外し、時間をあけてから再開します。けがの直後は患部を温めないようにしてください。
圧迫は締めすぎない、しびれや足先の色の変化が出たら緩める
内出血や腫れの広がりを抑えるため、弾性包帯やサポーターがあれば患部を軽く圧迫します。強く締めすぎると血流が妨げられるため、足先のしびれ、皮膚が白や紫色に変わる、冷たくなる、ズキズキする痛みが強まるといった変化が出たらすぐに緩めてください。
また、就寝時は気づかないうちに腫れが増すことがあるため、強い圧迫は避けます。横になるときはクッションや折りたたんだ毛布の上に足を乗せ、患部を心臓より高い位置に保つ(挙上)と腫れ対策に役立ちます。テーピングは巻き方によって負担が変わるため、自己流で強く巻かないようにしましょう。
入浴・飲酒・マッサージなど、腫れを強めやすい行動
けがをした当日から数日間は、血行が良くなりすぎる行動を控える必要があります。以下の行動は腫れや内出血を強めるおそれがあるため避けてください。
- 湯船に浸かる長湯:患部が温まり炎症が強まりやすいため、短い時間のシャワーにとどめます。
- 飲酒:アルコールによって血管が広がり、腫れや痛みが強まる原因になります。
- マッサージや動作確認:腫れた部分をもむ、強く押す、痛みを確かめるために足首を回したり歩いて試したりする行動は、傷ついた組織への負担となります。
夕食作りや翌朝の送り出しで歩く回数を減らし、腫れの変化を見る
家庭で過ごす夜は、椅子に座ってできる調理に切り替えたり、よく使う物を手の届く場所へまとめたりして、キッチンや室内を歩く回数を減らします。翌朝の送り出しなど、家族と分担できる動きはあらかじめ相談しておくと足首を休めやすくなります。
自宅では、腫れや内出血の広がり、夜間の痛みの強さ、体重をかけられる程度、しびれの有無を観察してください。数日たっても体重をかけにくい場合や、腫れが引かない・増す場合は、早めに受診してください。
応急処置の後は、状態を確認しながら活動を段階的に戻す
スポーツ選手の足首のけがでは、関節の表面の傷みや骨どうしのつなぎ目のゆるみ、関節の中の骨折など、関節の内側の傷をともなう場合があると報告されています4。そのため、応急処置で痛みが落ち着いたことだけで元の生活へ戻してよいとは限りません。当院では、捻挫・骨折・靭帯損傷に対して競技復帰を見据えた段階的なリハビリを実施しており、日常生活や仕事へ戻る際も、足首の状態を確かめながら少しずつ負荷を調整していくことが大切だと考えています。
診察では品出し・立ち仕事・送迎で困る動作も伝える
整形外科を受診する際は、いつどのようにひねったかに加え、仕事や家庭で求められる具体的な動作を医師へ伝えてください。たとえば「しゃがんで低い棚に品出しをする」「レジで長時間立ち続ける」「段差のある道を歩いて子どもを送迎する」といった情報があると、固定の方法や仕事中の工夫を相談しやすくなります。
当院には国家資格を持つ理学療法士のみが在籍しており、マンツーマンのリハビリで患者さん一人ひとりの状態や目標に応じた個別プログラムをご提案しています。けがの程度や時期に合わせて、いつからどのような運動を始めるかも含めて計画を立てていきます。
痛みの変化だけでなく、歩き方や動作の負担も確認する
痛みが和らいだあとも、無意識に患部をかばった歩き方を続けていると、足首の関節が不安定なままになったり、他の部位に負担がかかったりすることがあります。
当院では、リハビリを単に身体を動かす時間ではなく、痛みの原因や動作のクセを評価したうえで計画を立てるものと位置づけています。患者さんご自身の意欲的な取り組みも大切にしながら、立ち方や歩き方のバランスを整えるサポートを行っています。
自宅でのケアは、診断後の状態に合わせて見直す
けがの直後に行う冷却や安静などの応急処置と、回復の段階に合わせて行うストレッチや筋力トレーニングは目的が異なります。自己判断で早めに運動を始めると痛みがぶり返すこともあるため、自宅でのケアは医師の診断を受けたあと、その時点の足首の状態に合わせて切り替えていきます。
当院では、通院中だけのケアで終えるのではなく、ご自宅で続けられる運動やセルフケアをお伝えし、その後の再発予防と健康維持まで支える体制をとっています。捻挫を繰り返さないための身体づくりについてもご相談いただけます。
歩きにくいときの来院方法と、受診前に確認したいこと
自家用車がなく歩きにくい状態で受診するときは、無理に長い距離を歩かず、家族の付き添いやタクシーの利用などを検討してください。当院は東武スカイツリーライン新越谷駅西口から徒歩1分の場所にあります。
受付の時間や方法は、来るまえにホームページでたしかめてください。かかる費用は、どんな検査や処置をするか、どの固定具を使うかによって変わります。くわしい金額は、受診のときに窓口でおたずねください。
ポイント
診察のときは「品出し」「長い時間のレジ」「送り迎え」など、くらしで必要な動きを伝え、足首のようすに合わせて少しずつ活動を戻しましょう。
よくある質問
Q. 足首の捻挫でやってはいけないことは何ですか?
A. けがの直後から数日間は、湯船に浸かって温めること、飲酒、患部をもむ・押すといったマッサージ、痛みを確かめるために無理に足首を動かしたり歩いたりすることは控えてください。いずれも血流を増やしたり組織を傷つけたりして、腫れや痛みを強める原因になります。
Q. 捻挫の痛みは冷やすのと温めるのとどちらが良いですか?
A. けがをした直後で腫れや熱感がある時期は、タオルで包んだ保冷剤や氷で患部を冷やします。温めるケアは、急な炎症や腫れが落ち着いてから、医師の指示のもとで切り替えるようにしてください。
Q. 足首の捻挫にテーピングやサポーターは使えますか?
A. 患部を保護する目的でサポーターや弾性包帯を使うことはありますが、強く締めすぎるとしびれや血流障害を招くため注意が必要です。また、サポーターや痛み止めの薬で痛みを抑えて無理に立ち仕事や運動を続けると、けがが悪化するおそれがあります。固定の方法や薬の使い方は整形外科でご相談ください。
参考文献
1. Gomes YE, Chau M, Banwell HA et al. Diagnostic accuracy of the Ottawa ankle rule to exclude fractures in acute ankle injuries in adults: a systematic review and meta-analysis. BMC musculoskeletal disorders. 2022. PMID: 36151550 / DOI: 10.1186/s12891-022-05831-7
2. Bachmann LM, Kolb E, Koller MT et al. Accuracy of Ottawa ankle rules to exclude fractures of the ankle and mid-foot: systematic review. BMJ (Clinical research ed.). 2003. PMID: 12595378 / DOI: 10.1136/bmj.326.7386.417
3. 川﨑先生コラム 第22弾「ケガをしたら冷やすの?温めるの?」 | 日本医専 | 柔道整復師・鍼灸師を育成する専門学校. https://www.nihonisen.ac.jp/judo/blog_sports/?p=9020
4. Hepple S, Guha A. The role of ankle arthroscopy in acute ankle injuries of the athlete. Foot and ankle clinics. 2013. PMID: 23707172 / DOI: 10.1016/j.fcl.2013.02.001
東京医科歯科大学附属病院
さいたま赤十字病院
済生会川口総合病院(非常勤)
獨協医科大学埼玉医療センター
東埼玉総合病院
日本リハビリテーション医学会
日本股関節学会
日本人工関節学会
あわせて読みたい関連記事
